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「秩父川端温泉・梵の湯」を推奨する

温泉紀行ライター 飯出敏夫

秩父エリアでは希少な泉質の療養泉で、
高濃度の重曹を含む美肌づくりの名湯

 秩父エリアの温泉といえば、大体が単純温泉か単純硫黄泉、梵の湯1号井戸-1b.jpg1号井戸温泉分析書または温泉法上の温泉しかなかった。そんな中、ここ秩父川端温泉の泉質は、源泉温度16.1~16.5度のナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉である。源泉は2本あり、1号井戸の溶存物質は実に3.119g/kg、2号井戸も1.567g/kgと濃厚な成分を含む、きわめて高濃度の重曹を含んだ食塩泉で、アトピーなどの皮膚病などに卓効があるほか、美肌効果にも優れた療養泉だ。秩父エリアでは、まさに稀有な泉質の温泉である。

 梅澤勲社長はこの奇跡的とも言える良泉を評して「関東一の重曹泉」を標榜するが、正確には旧泉質名では「含重曹食塩泉」になる。この泉質は私の数々の入湯経験からみて、含硫黄-ナトリウム-塩化物泉(または炭酸水素塩泉)とともに、もっとも美肌効果の高い泉質だと思う。もちろん、泉質別適応症として慢性皮膚病、きりきず、梵の湯2号井戸-2b.jpg2号井戸温泉分析書やけどなどが挙げられる療養泉である。

 この湯は、湧出当初はオートキャンプ場「スプラッシュガーデン秩父」を利用するキャンパー用に男女別のこぢんまりとした半露天風呂で利用されていただけだったが、ここに新館「梵の湯」が誕生したのは07年4月のことだ。少しでも多くの人にこの良泉を体感してもらいたい、そして要介護の家族を抱える人たちに心おきなく温泉を楽しんでもらいたい、との梅澤勲社長の長年の熱い思いの実現である。風呂は大浴場と足湯サウナに温泉を使用し、露天風呂には不思議なパワーを発する2種類の鉱石を入れている。また、温泉が慢性皮膚病に卓効があることに着目し、ペット用の温泉浴槽付きドッグランも開設。そして、平成23年8月には、ついに家族で気兼ねなく入浴してもらえるようにと、個室付き貸切風呂が2室オープンした。社長さん.jpg梅澤勲社長


 梅澤社長は、近い将来、車椅子のまま入浴できる浴場の増設、自炊滞在も可能な湯治棟も設けたい、と意気軒昂である。後継者・梅澤政行専務の強力なサポートを得て、今後益々の活躍を期待したい。





飯出敏夫(いいで・としお)プロフィール用写真.jpg

 1947年群馬県生まれ。年間100日以上を全国の温泉地&温泉施設の取材に費やす温泉紀行ライターの第一人者。「梵の湯」には新館建設当初から注目し、アドバイザー役も務めた。

 著書に「一度は泊まってみたい秘湯の宿70」(成美堂出版)、アサヒDVDブック「秘湯ロマン」(朝日新聞社)、「名湯・秘湯の山旅」・「日帰りハイキング+立ち寄り温泉 関東周辺」(JTBパブリッシング)など、共著に「心を癒す温泉三昧」(保健同人社)などがある。